いらっしゃいませ。
「スタート」ボタンを押せば、ターンテーブルが回りだす。アームは自動的に1曲目にセットされる。昔持っていたやつは、手でアームを乗せていた。
布団にもぐりこみ、低音の落ち着いた波を感じながら、しているうちに曲がとまる。「ん?」
そう、「A面」が終わった。円盤をひっくり返さなければならない。これは今も同じ。めんどくさくなって、結局「B面」は聴かずに就寝。
堕落だ。
そういえば、まだCDが出ていなかった頃も、このめんどくささを人々は感じていたようで、縦置きの製品が一度出たことがあった。縦置きであれば、アームを両面に移動できる。確かパイオニアだったような...あれは売れたのだろうか。
「そうか、飛ばされへんのか?」
3曲目を聴きたいと思ったら、3曲目が始まるミゾの部分にアームを合わせる。昔は、ピタっと置けたものだった。
退化だ。
CDプレーヤーなら、シャッフルできるし、A面とB面の境目はない。大滝詠一の名曲「 A面に恋をして」の意味がわからない世代、ハンバーグを焼いているお母さんに、「ねえ、B面も焼いて」とお願いする子どもの微笑ましい逸話も理解不能な世代、が生まれている。
シングルであれば、今はc/w。Coupling with、の略。「I am」を平気で「Me is」という女子高生も、c/wの意味を知っている。
そういえば、Beatlesの「Yesterday」はもともと、「Act Naturally」という曲のB面だった。今は、c\w側の曲が逆に売れてしまうことってあるのかしら。 「あれ?こっちの方がいいやん。」と、盤をB面にしたまま毎日アームをスタートさせることのできた時代ならではのことだったのかしら。アルバムを出すときは、売れ筋の曲をA面、B面の1曲目に置く、なんて戦略もそういえば聴いたことがあるなあ。
November 6, 2006
junco